2012年3月31日土曜日

南日本新聞 社説 [食品の放射能] 「安全と安心」の確保を

南日本新聞 社説
[食品の放射能] 「安全と安心」の確保を

http://www.373news.com/_column/syasetu.php?ym=201203&storyid=39501
( 3/31 付 )
東京電力福島第1原発の事故後から使われてきた、食品に含まれる放射性セシウムの暫定基準値が4月から新しくなる。新基準値は従来の4分の1~20分の1と大幅に厳しくなる。
 暫定基準値は、事故直後の非常時の措置であり、基準値の見直しは当然である。食の安全・安心を希求する消費者は、より厳しい基準を求めてやまない。それに応えることが被災地の農林漁業を再生させる近道にもなるだろう。
 何より新しい基準値が子どもへの内部被ばくによる健康影響に最大限配慮している点は評価できる。
 厚生労働省が設定した新基準は、魚や肉、野菜などの「一般食品」が1キログラム当たり100ベクレルと暫定基準(500ベクレル)の5分の1に、子ども がよく飲む「牛乳」は4分の1の50ベクレル、毎日の生活に欠かせない「飲料水」は20分の1の10ベクレルに下げられる。
 特筆すべきは、新たに粉ミルクやベビーフードなどの「乳児用食品」が区分され、一般食品の半分の50ベクレルの基準が設けられたことだ。放射性物質に影響を受けやすい乳幼児の口に入るものは極力低く抑えようという判断である。
 基準値算定の目安になったのは、食品中の放射性セシウムによる被ばく許容線量だ。これまでの年間5ミリシーベルトから1ミリシーベルトに強化し、それに 合わせて各食品群のベクレルを下げた。国の試算では新基準値を超えない程度の食生活なら年間被ばく線量は大きく下回り、問題ないという。
 ただ、この新基準値もがんの発症と体内被ばく線量の因果関係が完全に解明されていない現状では、全面的に安心できる数値ではない。消費者自らが日常口に する食品が放射性セシウムにどの程度汚染されているのかを見極めることが大事で、疑わしい食品の摂取は極力避けるに越したことはない。
 出荷される食品の放射性物質の検査に当たっている東日本の17都県には、これまで以上に厳格で精度の高い検査業務を求めたい。それには新基準に対応できる検査態勢が整っていることが不可欠だ。飲料水はじめ微量のセシウムを計測できる高性能な機器の確保も喫緊の課題だ。
 一方で、農林漁業など生産者への配慮も欠かせない。基準値が低いほど安全だといっても、厳し過ぎると生産現場を締め付ける結果になりかねない。国が主導して、丁寧な検査の実施と情報の公開を徹底し、国民の理解と安心を得ることが重要だ。

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